2016年4月25日月曜日

泉佐野でフカの湯引きを学ぶ(シロザメの調理)

関空を臨む泉佐野港

海の博物館(三重県鳥羽市)でのサメ展で、サメの食文化について学芸員の方に話を伺った時、全国のサメ食について調べる機会がありました。

資料を漁るうちに、大阪でもサメ食が根付いている記述を見かけました。

私の脳裏に浮かぶ大阪人のサメ食は、「かまぼこ」。
それは落語から得た知識で、雑魚扱いされ練り物にするほかないサメは「外道」という見方でした。

しかしそれは大阪府下においてはどうも異なり、泉州では「フカの湯引き」というものが根付いているらしいのです。
そして現在でもサメは割と上等な扱いを受ける代物であることがわかりました。

 泉南地方では、大阪湾での漁業が営まれており、漁協などが運営する場外市場もそれぞれに開かれています。
 休日には安くて新鮮な大阪湾の魚介類を求め、近隣の方が利用されるようです。

 もしかしたらサメが見られるかもしれない。

 フカくじつな思いを抱きながら、京都から南海電車を乗り継いでやってきました泉佐野。
 駅前から出ている休日運行の無料巡回バスのルートで、う回気味に10分ほど乗れば「泉佐野青空市場」という停留所からアクセスできました。

 午後一時ごろでしたが、駐車場はほぼいっぱいで、にぎわっておりました。日曜に出漁はないにもかかわらず市場には多くの客と魚介が並んでいました。

 

 30近い店舗が建物内で一本の通路に向かい合わせで肩を並べ、呼び込みもにぎやかに活気づいていました。
  並んでいる魚を見ますと「イヌノシタ」「メタガレイ」「ガッチョ(ネズミゴチ)」「コウイカ」「トビアラ(サルエビ)」「手長(テナガダコ)」「シャコ」「ハモ」「ミヤコボラガイ」「ツメタガイ」と砂泥に生息するであろうバラエティ豊かな魚種に驚かされます。
 あまり大きな流通に乗ることのないこれらは地元での消費に回され、府外の人間はまず知ることはないでしょう。
 

 目移りしながら市場を見まわします。肝心のサメは…。
 パッと見、店頭に並ぶ様子はないようです。やはりだめか…。見過ごしてはいないかとまた入口から見ますと、体盤幅50センチぐらいの立派なオスのアカエイがいました。
 裏返しにされ、大きな口がのぞいています。
  値段は「1000」と手書きの赤い字で書かれています。サメがいなければエイでも買うか。
 そう思っていますと、ヤッケを着た茶髪のあんちゃんが、 丁々発止で旦那とやり取りしだしました。
   裏へ表へひっくり返し、見定めたのか札びらをさっと出すなり、アカエイはビニール袋にズボッと収まり、意気揚々とあんちゃんは引き揚げ。キップの良さから察するにそれが目当てであったことはたやすく理解できました。

 自分はあんなふうに買えんわ、と思って他の魚を見てますと「手長(ダコ)が旬やで兄ちゃん!」とだみ声のおかみさん。
 みると、15センチくらいのタコが三匹、ザルの上に鎮座ましまし。
 今日はまけといたるし1300円を100円引きやで、せやけど生きとるの三つはしんどいなと、首をかしげつつ「サメはあらへんのです?」と聞きますと、「サメ? フカか、フカは昨日はあった!」とぶっきらぼうなお返事。

 あるのはあるんやなと安心しつつ、ないもん言われてかなんこっちゃと、おかみはうつむき、私も退散。
 そう思って隣のお店に。

 この市場でよく見かけるごつごつした貝を観察していますと、「これは塩茹でにしたらおいしいよ」とお姉さん。
 ザル二つで600円やけど、500円でどう?とやっぱりようけ買いよしとの攻勢。
 ようけはいらん、と思っていると「お試しで一盛どう?」と察してくれた。
 ほんなら一つと、お買い上げ。これはなんちゅう貝です?、と聞けば「ミヤコボラガイ」と即答。
 これは甘辛く、しょうゆとみりんと砂糖で煮てもおいしいと教えてくれました。

 丁寧に教えてくれるお姉さんに思い切ってサメを尋ねると、「サメ? フカね!そこにおるよ」。

 みると、ぶつ切りになったサメが尾頭付きでトレイの上にちょこんと載っていました。

 サメや、間違いなくサメや、いやここではフカか。
 色合いから察するに「シロザメ」。頭、胸、胴、尾っぽに分かれた姿でありました。
 値段は「1300」。あのでかいエイより高い。でも目方は3キロくらいはある。
 「それもらいます」。
ニオイもなく、美しい新鮮な白身
即断即決お買い上げ。
  ワタは抜いてあるか聞きますと、一応とってるけど少し残っているからきれいにしてあげるわ、とあつらってもらうことに。
 聞けば、買い付けてすぐに下処理をするので、鮮度は保証できると自信の回答。
 たしかに、肉を見たらまだ動いていました。血抜きなんかもしっかりやってるので全然臭くないとの話でした。
  ここまでしっかりサメの処理ができるとこが近畿にあったとは…。

 保冷剤も詰めてある、用意していた布製のクーラーボックスを差し出し、入れてもらうことに。
 処理をするまで時間かかるからちょっと見て回っておいてと、その場を離れ市場内のお寿司屋に寄ろうとすると、12組待ち。
 仕方なく、もう一往復。

 他の店も店頭と生け簀の様子を隈なく見ましたが、サメは私が買ったところにしか置いていないようでした。
 改めて聞くと、サメはそれほど水揚げはないそうで、地元では湯引きで食べるのが定番、煮つけは聞いたことがないそう。他にも、唐揚げなんかもすることもあるそう。
 話を聞くうちに、サメのプロと大将に呼ばれる職人さんがさらに詳しい食べ方湯引きの注意点なども事細かに説明してくださいました。
 湯引きは、海水(か同等の塩水)で軽く洗い、沸騰させた海水で身ごと鍋に放り込み10~15秒ですぐに引き上げ(早いかなと思うくらいで)、ざらざらの皮の部分が指でめくれる状態をたわしでそぎ落とす。
 この時、皮のプルプルしたところを残すようにしないとおいしくないそうです。
 
湯がいて表面の皮だけ捲れやすくなった状態。軽くこすればポロポロとれた。
実際に家でやってみると、表面のザラザラだけが落ち、プルプルの部分はきちんと残りました。
ここから水気を取り、5ミリから1センチ程度にぶつ切りにしたものを海水で1分少々湯がいて、氷水でしめれば、湯引きの完成です。

 
右側の皮のプルプルがイケる! ハラスの部位もいい食感でした。


 酢味噌でいただくのがベストとのこと。
 さらに私の買った身は、鮮度抜群なので刺身にもできると勧められました。胴の太い部分がいいとのこと。
 なので湯がかずに皮を削いで切り分けました。見た目はタイに似た白身で非常にきれいです。
 食感は少しスジがあるものの、タイと遜色ないムチムチ感。食べごたえある刺身でした。
貝は茹で方が足らなかったのか、あくが十分にとれずやや失敗。また挑戦しようかな。
 唐揚げも、身が思ったよりほぐれやすいので、片栗粉を混ぜるか、市販の粉をたっぷりつけた方がよさそうです。湯引き後に揚げるのもありでしょうか。

 市場できちんと丁寧に食べ方を知れば、食の豊かさはさらに増すのです。
 地モノの魚をおいしくいただくのは、ごく自然な食への関わり方で、土地の個性でもあるでしょう。
 地産地消の意味するところは、すなわちこういったことの伝承がきちっとあるかどうかなのでしょう。

 江戸前ならぬ浪花前ともいうべき泉南の魚介。
 もっともっと楽しめそうなフカい魚のワンダーランドというべきでしょうか。
 親切に教えて下さった鮮魚店「えぼし」さん、ありがとうございました。

(2016/4/25:店名を修正)